第 一 章(6)教育理念を失い「身売り」に走る

人減らしはできない、組合潰しは失敗に終わる、ヒゲも辞めるどころか難破船の舵取りとして活路を求めて必死に活躍している。既に教育理念を失い、今抱えている手元の資金を死守することしか考えられなくなっている経営者のたどる道は、古今東西限られている。身売りである。
ついに、丸山夫妻は、創立以来、ヒゲ、教職員ともどもここまで続けてきた盈進学園をそっくり身売りすることに踏み切った。創立者として最悪の選択だと思う。手元の資金を減らすことには代えられなかったのであろう。生徒、教職員、父母に対するこれ以上の背信行為はないが、元々教職員に対する責任感など無かったのであれば、このような背信も必然だったのだろう。秘密裏に大東文化大学との交渉が進められ、突然、吸収合併が発表された。

組合の姿勢ははっきりしていた。経営者を選べない以上、誰が経営者でもそれに対応していくだけのこと、生徒に責任を持つ教職員としては授業を大切にして教育の現場を守るだけだという方針である。大学の経営であるからには、従来の聞く耳を持たない個人経営に比べれば今まで以上に悪くはならないであろう、むしろ出口の見えない危機を脱して、誰もがほっとしていたのがその時の実感だった。

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