第 五 章(4) インタビュー前に予期せぬハプニング

五社の所長候補には、待機してもらっていたが、当然、それを待たずに、各会社とも役員等が来校して、自社の利点を強調していった。中でも熱心だったのは、フジタである。米国留学で英語が堪能な藤田一憲東京支店営業部長は、度々訪ねてアレグザンダーとも話し込んでいた。彼は、フジタの社長の長男で、後に盈進の教職員の間では、プリンスの愛称でよばれていた。

インタビューの2週間ほど前に、大成建設の使いだというので、私の中・高で同期の友人から電話があり、新宿の同期生で運営しているクラブで会った。
第一に、大成の役員が夕食に招待するので出席してほしい、第二に、学園は直営工事を考えているようだがそれはやめるようにという要請であった。この二つをこの場で受け入れたら、翌日2,000万円を私の銀行口座に振り込むというのである。
目的が大成の役員に会わせることだとは直ぐわかった。フジタが、積極的に「盈進プロジェクト」を仕事にしようと学園に接触していることは、当然、大成の耳に入っていると推察出来たからである。目的が、私を大成の役員と会わせることだとわかったので、すぐに、答えた。
事前に連絡を貰えば、大成の役員にはいつでも学校でお会いする、第二に、施行の方法は理事会で検討中なので、今は答えられないと伝え、金の件は、即座に一笑に付した。テレビ・ドラマや小説では知っていたが、目の前で買収の申しを受けたのは、初めてだった。役員が来校した時、偶々学校を空けていて会えなかったのだが、フジタの熱心な接触を知って大成は、とにかく学校との接触を急いでいたのである。

翌日朝、この会合の件を、酒井田理事長と錦織事務長に報告したがその直後、早くも大成から電話があり、錦織事務長は「また、随分速いですね。」と笑っていた。フジタが学園と接触を深めているとの情報を得ていたようで、大成はかなり焦っていのだろう。次の日の午後、錦織事務長同席で大成の役員と私の部屋で会った。
冒頭、「お使いなど頼まなくても、いつでもお会いするのに。」と言うと、「何の話でしょう?」と、お使いの件は、あっさり否定した。これで、前の晩の友人との会合はなかったことになる。買収の話も、立ち消えである。すでに買収を断られているので、今更持ち出すわけにはいかなかったのだ。
その後は、もっぱら通常のセールス・トークが続く。工事所長に木造の経験はないが、大成の傘下に優れた年配の棟梁が居るので、心配はないと強調していた。もっとも、問題は、英語によるアレグザンダーとのコミュニケーションにあったのだが、それはインタビューでわかるので、その場では触れなかった。会談は終わった。
それ以後は、大成からも、その時の同期の友人からも、電話も含めて一切接触はなかった。通常の営業活動である。ただ、大成の焦りが、営業活動の行き過ぎを招いたと思われる。

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