第 四 章(3)酒井田理事会発足・妨害活動エスカレートする 2) 沖田ら再任せず酒井田理事長の理事会発足

理事の改選期になっていたので、学識経験者理事だった沖田ともう1名の沖田側の理事を選任せず別の理事に代えて、理事会を一新した。鈴木理事長は、合同教職員会で「暫く務めさせていただいたが、ここで理事長をやめ、お預かりしていた理事長を酒井田先生にお返ししたい。」と挨拶した。

この間に妨害活動は、エスカレートする。彼等の主要な手段は、デタラメな捏造記事による怪文書の散布である。全く根拠のないでまかせの文書を銀行始め関係者に送りつけたのである。
地元の協力的だった県会議員、入間市長にも届き、大方はあまりのデタラメな内容に呆れて無視していたが、一部問い合わせてくる人もいて、事情を聞くと理解した上で激励してくれた。三銀行は、彼等の意図を承知しており、怪文書などはことごとく無視していた。

この段階で、ついに、日本で当時インテリ総会屋として有名だった小川薫が登場した。盈進学園の理事会に対して事実無根の誹謗中傷を並べ、断固、学園の進めるプロジェクトを壊滅させると宣言したのである。知らない者にとっては、何の意味もないが、これを見て三菱信託本店から営業担当者が、理事長のところへ駆けつけてきた。彼は、名前を口にするのもはばかり、小川と言わずに“Oさん”と言うのである。
酒井田は姿勢が良い。キチンと背筋を伸ばし、淡々と対応した。ちょび髭に昔のまんまるメガネで、見ただけでは田舎のおっさんである。
「大変なことになりました。まさか予想もしなかったのですが、ついに、“Oさん”が出てきました。こうなると、訴訟の件は、何が何でも和解にしなくてはなりません。先方の条件もすべて受け入れて下さい。」
「Oさんと言うのは誰のことですか?」
「小川薫という、今日本で最も恐れられているインテリ総会屋です。彼が絡んで来た以上穏やかに引いてもらうしかないのです。学校にでも来たら大事ですから。」
「私は、そのような人を知りません。学校には何の弱みもありませんから、その人をここへお連れになったらどうですか。いつでもお会いします。」
「冗談ではない。お断りします。」
「それなら、放っておきましょう。彼の書いた文書も読みましたが、全く根拠のない空威張りで、まともな人なら見もしないでしょう。」

本店の担当者は、理事長室を出ると,汗びっしょりで私にぼやき始めた。
「呆れて話になりません。“怖いもの知らず”とはよく言ったものです。本店に戻ってこの通り報告しますが、とにかく穏やかに対応して下さい。和解のことも考えておいてくださいね。いやあ、参った、参った。こんなひどい話しになるとは思いもしませんでした。」
「ご苦労さまでした。酒井田は、あの通りの方です。小川も学校を脅すのは無理でしょう。和解はしません。考える必要もありません。」
彼は、ほうほうの体で引き揚げた。

勿論、小川はその後沙汰止みで、表面には出てこなかった。保釈中でもあり、学校に来るなど目立つ行動は取れなかったのであろう。実態はわからないが、一般に大企業は、どこか弱い部分を抱えており、そこを総会屋に狙われるのである。この時も狙いは学校ではなく、三菱信託だったと思う。本店の総務担当者が穏やかに話をつけたのであろう。

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