第 七 章(4) “We have succeeded.”

年明けに来日した時、ほとんど完成していた教員室棟、ホーム・ルーム通りを前に、工事の予想以上のスピードと姿を現しつつあったキャンパスの全貌に接し、アレグザンダーは驚いていた。
彼は、半ば呆然として立っていたが、一瞬相好を崩し、側に立っていた私に“You have succeeded.”と叫んだ。
オウム返しに、彼に、”No. You have succeeded.”と応じた後、
即座に二人は声をそろえて、“We have succeeded.” と手を取り合って、子供のように躍り上がって喜び合った。傍から見れば「いい歳をして・・・」と笑われるところかと思うが、この時の嬉しさは、今でも鮮やかに蘇ってくる。

工期の厳守については、日本のゼネコンは世界に冠たる実績を誇っているが、それにしてもこの短期間にあれだけの規模のキャンパスを完成させ、しかもアレグザンダーのイメージを見事に具体化したのは、藤田所長の異例な工夫と努力があったからだ。
アレグザンダーが驚いたのは、スピードもさることながら、ほぼイメージどおりのキャンパスになっていたからだ。
図面はあるし、所長には意図を話し具体的に指示してはいたが、それでも来日前には、何かとんでもないものができているのではないかとの密かな不安を抑えられなかったということだった。それが、予想以上の出来栄えだったことで、心からホッとし、pleasant surprise を素直に楽しめたとのことだった。

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