第 一 章(2) 準備活動始める・高層化計画の検討は安井建築設計事務所に依頼

狭い敷地の實例を見学したが、一定の容積を確保するためには、高層化以外の方法は考えられなかった。と言っても、高等学校の場合は八階建てが限度だろう。既に公営団地では、14階建てもあったが、1200名規模の高校に幼稚園(100名)、小・中学校(合計100名)を入れても、14 階はいらない。
問題はグランドである。屋内体育館を用意するとしても、外気に触れることのできるグランドはほしい。狭くはあるが、地上の部分を幼稚園、小学校で使うとすれば、中・高校用のグランドが必要となる。梁を使って、屋上の外周を拡張することは出来そうだが、屋上だけでは限度がある。屋上下の何階かを吹き抜け空間にすれば、バスケット、バレー・ボールのコートは取れるかもしれない。この場合、建物は八階以上になるだろうし、面倒な構造上の問題も出てくるだろう。

いずれ、容積率の問題もあり、当時のガラスを多用した明るい校舎を建設してくれた安井建築設計事務所に検討を依頼した。この時点では、實例見学から学んだことを活かすにしても、高層化の方針は変わっていない。狭いとはいえ、武蔵野市の校地を不動の前提と考えていたからである。
高層化によって、グランドさえなんとか工夫出来れば、児童、生徒を収容できるだけの容積は確保できそうだ。しかし、アイデアは色々あっても、高層化となると、アマチュアの考えには限界がある。三次元になるとお手上げで平面図しか理解できず、「建築馬鹿」シリーズ(鹿島選書)の矢田洋に“マドリ(間取り)ニンゲン”とからかわれるアマチュアでは、高層のイメージを持つのは無理である。容積率の問題、構造計算、コストの問題等、プロに任せるしかない。
ガラスを多用し明るい校舎を増築してくれた安井建築設計事務所(以下、安井)に高層化の基本計画を検討してもらうことにして、新キャンパス計画に入る準備活動を始めた。

「第 一 章どのようにして木造低層主体のキャンパスが生まれたか(3)施設見学の旅と建築関係書籍の乱読」へ
目次に戻る