一八九五年三月末、東野高校のキャンパスは完成した。
四月、新入生を迎える入学式の前夜、広場の左右に並ぶ小音楽堂、大講堂、管理棟、教室棟、体育館の全照明を点灯してもらった。カフェテリア前の芝生の斜面に腰を下ろし、同僚と夜景を楽しんだのである。
すべての窓が華やかに明るい管理棟と教室棟、その明かりに浮かび上がる柱の黒と緑の壁面の大講堂、全館オレンジ色の照明に染め上げられた体育館が、今、すべて現実となってそれらの姿を池の水面に映している。
夢のような光景に、時のたつのを忘れて、いつまでも見入っていた。
(第一部 高層化計画から木造低層主体の新キャンパスへ 終わり)